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2017.06.29 (木)

「 沖縄の言論空間に八重山日報の新風 」

『週刊新潮』2017年6月29日号
日本ルネッサンス 第759回
 

長年、沖縄の言論空間は、地元の2紙、「琉球新報」と「沖縄タイムス」によって歪められてきた。私は度々、両紙の目に余る偏向報道を批判してきたが、その異様な状態に風穴を開けるべく、今年4月1日、「八重山日報」が沖縄本島の新聞市場に参入した。

同紙は石垣島を中心とする八重山諸島で発行されてきた。現在、「産経新聞」の記事を大幅に取り入れて2大紙とは対照的な8頁立ての小振りな新聞として発行中だ。八重山日報が沖縄本島で定着すれば、沖縄の言論空間がよりまともになることも期待できる。そこで目下の目標は、今年中に沖縄本島で5000部の契約を獲得することだそうだ。5月末までの2か月で購読は約2000部を超え、県民の受けはよいという。

「那覇で八重山日報を読めて本当に嬉しい、こんな新聞を待っていた、これで元気になれると言って下さる人が後を絶ちません」と、八重山日報社長の宮良薫氏が語る。

活発な言論活動を展開中の我那覇真子さんも、なぜ沖縄県民が「八重山日報」を歓迎するのかを語った。

彼女は、6月14日にスイス・ジュネーブの国連人権理事会で、「沖縄の人権と表現の自由が、外からやって来た基地反対活動家や共産革命主義者、さらには偏向したメディアによって脅かされています」と報告した。シンポジウムでは「(国連などで、日本政府に弾圧されていると訴え)被害者のふりをしている人たちが、本当は加害者です」と、反基地派への批判もした。
 
信用すべき沖縄のメディアは2大紙か八重山日報か、それを知るには国連人権理事会で日本政府を批判した特別報告者、デビッド・ケイ氏の演説を各紙がどう報じたかを見るべきだと、我那覇さんは強調した。

「約15分の演説でケイ氏が沖縄に触れたのは4秒間。激しい論争になっている場所でのデモ活動が、『たとえば沖縄のように、制限されているように思う』という部分です。この演説を正確に伝えたのは八重山日報だけでした。琉球新報も沖縄タイムスも、国連のイメージを利用して自分たちの主張である日本政府非難を強調したにすぎません」

記者クラブ制度を批判

ケイ氏は沖縄ではデモ活動が制限されていると報告したが、沖縄では事あるごとに大規模なデモが行われてきた。那覇の米軍基地正門前では常に反米軍基地派がデモをし、辺野古では暴力沙汰も珍しくない。沖縄ではデモは禁止などという批判が当たらないのは明らかだ。

そこで我那覇さんは演説後、ケイ氏に沖縄に行ったことはあるかと問うた。

「一度もないと、ケイ氏は答えました。それなのになぜ『たとえば沖縄のように』などと、恰(あたか)も沖縄を見てきたように言うのか。そこでまた尋ねました。これから行く予定はあるか、と。今後も行く予定はないと、彼は答えました」

このようなことも含めて、全体像を詳しく報道したのは八重山日報だけだった。対照的に2大紙は、ケイ氏が「16分の演説の中で沖縄にも触れ」たと報じたが、それがわずか4秒だったことや、氏が一度も沖縄を訪れていないことなどは、全く報じていない。ついでに言えば、2大紙は我那覇さんの演説もシンポジウムでの発言も報じていない。彼らが詳報したのは、ケイ氏の日本政府批判である。

そうした中、噴飯物だったのは、沖縄タイムスによるケイ氏への取材記事だ。その中でケイ氏が次のように記者クラブ制度を批判している。

「政府が気に入ったメディアに情報を提供し、独立メディアを排除するという問題点がある」

日本の記者クラブ制度はメディアが創ったものだ。現在は外国人記者にも雑誌記者にも開放されているが、かつてはメディア側が、記者クラブに加入できるメディア、できないメディアを選んでおり、極めて排他的だった。主役は大新聞やテレビ局であり、外国人記者も雑誌もお呼びではなかった。

従って、記者クラブ批判はメディアに向けるべきで、政府にではない。お門違いの日本政府批判は、ケイ氏が日本の記者クラブ制度の歴史や構図を理解していないからであろう。

それを沖縄タイムスがそのまま報じたのは無知ゆえではないだろう。彼らもメディアの一員であるからには、記者クラブについて知らないはずがないからだ。であれば、ケイ氏の発言が日本政府批判であったために見逃したのだろうか。

同紙の6月14日の社説にも驚いた。日本政府がケイ氏に反論したことに関して、「1930年代のリットン調査団への抗議を彷彿させる」と書いている。

2大紙の圧力

満州事変に関連して、国際連盟は米英仏独伊の55国からなるリットン調査団を派遣、彼らは約8か月かけて、日本と中国でおよそすべての関係者と面談して報告書をまとめた。日本批判の内容だと思われがちだが、実は満州国に関して日本の立場を驚くほど認めている。沖縄に行ったことのないケイ氏が沖縄について4秒間語った報告を権威づけ、利用したいために、社説子はケイ報告をリットン報告書と並べたのか。教養不足か偏見か。いずれにしても、この種の比較をする論説は全く信用できない。

我那覇さんは問うているのだ。全体像を伝えようとする八重山日報と、自分たちの主張したいことだけを強調する沖縄タイムスの、どちらが公平・公正かと。

より公正なのは明らかに八重山日報だ。だが同紙は、その後伸び悩んでいる。配達要員不足、販売店不足、沖縄紙に欠かせない「お悔やみ情報」の欠落などに加えて、2大紙の圧力があると思われる。宮良氏が語った。

「販売店に『八重山日報を配達することを禁じます』という通達書が配られたのです。これをやられたら、我々は本当にきつい。ただ明らかに独禁法違反ですから、公正取引委員会が、通達書を出した沖縄タイムスに調査に入りました。沖縄タイムスは慌てて通達書を回収しました」

国際社会に向かって、日本政府が沖縄に圧力をかけ続けていると訴えてきた沖縄タイムスが、足下では弱小新聞社に違法に圧力をかけている。欺瞞そのものではないか。

新聞社の貴重な収入源のひとつ、折り込み広告がどこかで止められている疑いについても宮良氏が語る。

「我々の営業力不足かもしれませんが、4月1日から今日まで、折り込み広告が1件もないのです」

沖縄における熾烈なメディア戦争の行方は、日本の国家としての在り方にも深刻な影響を及ぼす。事実を基に全体像を伝えるメディアこそ必要な今、偏向報道をやめず、公正な競争原理をも踏みにじる沖縄タイムスに断固、抗議するものだ。

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「 沖縄の言論空間に八重山日報の新風 」

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